温泉とは

何が温泉かを決めているのが、温泉法(昭和23年法律第125号)です。

これによると、地下から湧き出した温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除きます。)のうち、次にあげるもののどれか一つが該当していれば温泉とされています。

1 温度が25℃以上

 

  あるいは

 

2 決められた19の物質のうち、1つ以上が、定められた量以上溶け込んでいる。(別表のとおり)

  例:温度10℃の湧き水があり、1kg中に1,500mgの塩分が溶け込んでいれば温泉です。

別表

1 温度(温泉源から採取されるときの温度とする。) 25℃以上
2 物質(下記に掲げるもののうち、いずれかひとつ)  
物質名 含有量(1kg中)
溶存物質(ガス性のものを除く。) 総量1,000mg以上
遊離炭酸(CO2 250mg以上 
 リチウムイオン(Li+ 1mg以上 

 ストロンチウムイオン(Sr2+

10mg以上 
バリウムイオン(Ba2+)  5mg以上 
フェロ又はフェリイオン(Fe2+、Fe3+)  10mg以上 
第一マンガンイオン(Mn2+)  10mg以上 
水素イオン(H+)  1mg以上 
臭素イオン(Br-)  5mg以上 
よう素イオン(I- 1mg以上 
 ふっ素イオン(F- 2mg以上 
ヒドロひ酸イオン(HAsO42-)  1.3mg以上 
メタ亜ひ酸(HAsO2)  1mg以上 

総硫黄(S) 

(HS-S2O32-+H2Sに対応するもの)

1mg以上 
メタほう酸(HBO2)  5mg以上 
メタけい酸(H2SiO3)  50mg以上 
重炭酸そうだ(NaHCO3)  340mg以上
ラドン(Rn) 

20(百億分の1キュリー単位)

以上 

 ラジウム塩(Raとして) 一億分の1mg以上

温泉のメカニズム

従来の温泉は、自噴あるいは浅い層までの掘削によるものでしたが、近年掘削技術の進歩により、1,000mを超える大深度掘削が可能になり、県内でも各地で掘削が行われています。

1,000mを超える大深度まで降水が浸透するには、50年~100年以上という非常に長い時間を要します。温泉を末永く利用するためには、水収支を崩さないなど、温泉の涵養源となる地域の保護が必要です。

 

温泉は大別すると「火山性の温泉」と「非火山性の温泉」に分類することができます。 

 

○火山性温泉

マグマのガス成分や熱水溶液などが混入したり、流動中に岩石の成分を溶解することなどにより温泉の様々な泉質が形成されると考えられています。

○非火山性温泉

①深層地下水型

地下では、一般的に100mごとに温度が約3℃づつ上昇するといわれています。例えば地表が15℃と仮定すると、地下1000mの地温は45℃、1500mでは60℃となります。

また、マグマが冷えた高温岩帯が地下にあるケ-スがあり、地下水が高温岩帯や地下増温率による地熱を熱源として温められたものが、非火山性温泉の深層地下水型と考えられています。

 

②化石海水型

太古の地殻変動などで古い海水が地中に閉じ込められている場合があります。これを化石海水と呼んでおり、地表から数百mにある場合には、地下増温率でそれほど高温にはなりませんが、水温25℃未満でも塩分を多量に含んでおり、温泉法で規定する温泉に該当します。

 

③その他の温泉

水温が25℃未満でも規定された成分が一定量以上含まれていれば温泉となり、含有される成分によって泉質名がつけられないものもあります。

温泉の泉質

温泉の泉質は温泉水に含まれている成分と含有量などによって、幾つかのグル-プに分けられています。

泉質名      特徴
単純温泉

泉温が25℃以上あり、温泉水1㎏中に含有成分が1000㎎に満たないものです。pH8.5以上のものをアルカリ性単純温泉と呼び、肌触りが柔らかく、すべすべした感じの、癖のない温泉です。

 

【県内の代表的な温泉地】

 老神、片品、川場、宝川、谷川、水上、湯檜曽

 二酸化炭素泉

 温泉水1㎏中に遊離炭酸1000㎎以上を含むもので、炭酸ガスが溶けて細かい泡が出るため、入湯すると身体に炭酸ガスの小気泡が付着します。飲用すると炭酸の爽やかな喉越が味わえ「泡の湯」「ラムネの湯」などと呼ばれています。

 

【県内の代表的な温泉地】

下仁田、猿川

 炭酸水素塩泉

 温泉水1㎏中に含有成分が1000㎎以上あり、陰イオンの主成分が炭酸水素イオンのものをいいます。無色透明で肌をなめらかにする効果があり美肌の湯とも呼ばれ、お湯そのものの肌ざわりも良く、清涼感に満ちた湯上がり感をもたらしてくれます。

 

【県内の代表的な温泉地】

鹿沢、赤城、滝沢・妙義

 塩化物泉

 温泉水1㎏中に含有成分が1000㎎以上あり、陰イオンの主成分が塩素イオンのものです。海水の成分に似た食塩を含んでおり口に含むと塩辛く、皮膚に付着した塩分が発汗を抑えるので、保温効果があります。このため、「熱の湯」とも呼ばれています。

 

【県内の代表的な温泉地】

四万、八塩、高山、小野上、磯部、梨木

 硫酸塩泉

 温泉水1㎏中に含有成分が1000㎎以上あり、陰イオンの主成分が硫酸イオンのものをいいます。無色または黄色味があって、飲むと苦みのある温泉で古くから「傷の湯」とも呼ばれています。

 

【県内の代表的な温泉地】

湯宿、法師、猿ヶ京、上牧、伊香保、尻焼、沢渡、霧積

 硫黄泉

 温泉水1㎏中に総硫黄2㎎以上含むものです。硫化水素ガス特有の卵の腐ったような臭いが鼻をつき、黄白色の沈殿物は「湯の花」と呼ばれ、いかにも温泉らしい温泉です。ただし、硫化水素は有毒ガスですので注意が必要です。

 

【県内の代表的な温泉地】

川原湯

 酸性泉

 温泉水1㎏の中に水素イオン1mg以上を含有(pH3未満)しているものです。ほとんどが無色か微黄褐色で、殺菌力が大変強く、口に含むと酸味があり刺激が強いので、病弱な人や高齢者、肌の弱い人にはあまり向きません。長湯は禁物で湯ただれをおこす場合もありますので注意が必要です。

 

【県内の代表的な温泉地】

草津、万座

温泉の禁忌症・適応症

温泉には普通の水と違って、いろいろな化学成分を含んでいるので、入浴した際、皮膚を通して体の中にその成分が入り、体に作用し、その結果起こる生体反応が病気に有効に作用するということです。

しかし、どんな良薬も使用方法を間違えれば毒にもなるように、温泉入浴や飲泉がマイナスに作用する場合があります。

そこで、温泉の禁忌症・適応症が定められています。

禁忌症

温泉療養をしてはいけない病気や症状のことを「禁忌症」といいます。

これは、急性炎症性疾患や急性感染症などが対象になっており、たとえば、へんとう腺炎、肺炎、流感、赤痢、チフスなどが該当します。抗生物質を使用する病気や病状は殆ど温泉療養に適さないと考えられています。

このほかに、癌や肉腫、重症の糖尿病、白血病なども禁忌症に当たります。

適応症

温泉療法をおこなってよい病気や症状のことを「適応症」といいます。

これは、主に慢性の病気が該当します。

病気療養のために温泉を利用する場合は、専門的な知識を持つ医師、温泉療法士の指導を受けることをお勧めします。

温泉の一般的禁忌症

急性疾患(特に熱のある場合)、活動性の結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性疾患、高度の貧血、その他一般に病勢進行中の疾患、妊娠中(特に初期と末期)

療養泉の一般的適応症

神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、打ち身、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進

温泉の泉質別禁忌症

  泉質 浴用 飲用
塩類泉

塩化物泉

炭酸水素塩泉

 一般的禁忌症に準ずる

腎臓病、高血圧症、その他一般にむくみのあるもの、

甲状腺機能亢進症のときはヨウ素を含有する温泉は禁忌とする

硫酸塩泉 一般的禁忌症に準ずる 下痢の時
特殊成分を含む療養泉 二酸化炭素泉 一般的禁忌症に準ずる 下痢の時
硫黄泉

酸性泉

皮膚、粘膜の過敏な人、

特に光線過敏症の人(硫化水素型)

高齢者の皮膚乾燥症

 

下痢の時

温泉の泉質別適応症

 

適応症   

 

泉質名

 

関節痛 筋肉痛 神経痛

慢性消化器病

慢性便秘

肝臓病 肥満症 貧血 切り傷 やけど

慢性皮膚病

虚弱児童

慢性婦人病

動脈硬化症

高血圧症

月経障害

糖尿病 痛風

慢性胆嚢炎

胆石
 単純温泉       一般的適応症に準ずる
塩類泉 塩化物泉                                 
炭酸水素塩泉                           
硫酸塩泉                    
特殊成分を含む療養泉 二酸化炭素泉                            
含鉄泉                                    
硫黄泉                        
酸性泉                                    
放射能泉 ▲                    ▲ 

凡例:〇浴用 ▲飲用 ☆は硫化水素型

浴用の方法及び注意点

入浴前の注意

  1. 食事の直前、直後及び飲酒後の入浴は避けましょう。酩酊状態での入浴は特に避けましょう。
  2. 過度の疲労時には身体を休めましょう。
  3. 運動後30分程度の間は身体を休めましょう。
  4. 高齢者、子供及び身体の不自由な人は、1人での入浴は避けることが望ましとされています。
  5. 浴槽に入る前に、手足から掛け湯をして温度に慣らし、身体を洗い流しましょう。
  6. 入浴時、特に起床直後の入浴時などは脱水症状等にならないよう、あらかじめコップ一杯程度の水分を補給しておきましょう。

入浴方法

  1. 入浴温度
    高齢者、高血圧症若しくは心臓病の人又は脳卒中を経験した人は、42℃以上の高温浴は避けましょう。
  2. 入浴形態
    心肺機能の低下している人は、全身浴よりも半身浴又は部分浴が望ましいとされています。
  3. 入浴回数
    入浴開始後数日間は、1日当たり1~2回とし、慣れてきたら2 ~3回まで増やしてもよいでしょう。
  4. 入浴時間
    入浴温度により異なりますが、1回当たり、初めは3~10分程度とし、慣れてきたら15~20分程度まで延長してもよいでしょう。

入浴中の注意

  1. 運動浴を除き、一般に手足を軽く動かす程度にして静かに入浴しましょう。
  2. 浴槽から出る時は、立ちくらみを起こさないようにゆっくり出ましょう。
  3. めまいが生じたり、気分が不良となった時は、近くの人に助けを求めつつ、浴槽から頭を低い位置に保ってゆっくり出て、横になって回復を待ちましょう。

入浴後の注意

  1. 身体に付着した温泉成分を温水で洗い流さず、タオルで水分を拭き取り、着衣の上、保温及び30分程度の安静を心がけましょう(ただし、肌の弱い人は、刺激の強い泉質(例えば酸性泉や硫黄泉等)や必要に応じて塩素消毒等が行われている場合には、温泉成分等を温水で洗い流した方がよいでしょう。)。
  2. 脱水症状等を避けるため、コップ一杯程度の水分を補給しましょう。

湯あたり

温泉療養開始後おおむね3日~1週間前後に、気分不快、不眠若しくは消化器症状等の湯あたり症状又は皮膚炎などが現れることがあります。このような状態が現れている間は、入浴を中止するか、又は回数 を減らし、このような状態からの回復を待ちましょう。

その他

浴槽水の清潔を保つため、浴槽にタオルは入れないようにしましょう。

温泉法に定める掲示

温泉法では、温泉を公共の浴用又は飲用に供する者は、施設内の見やすい場所に、次の事項を掲示しなければならないとされています。

  1. 温泉の成分
  2. 禁忌症
  3. 入浴又は飲用上の注意
  4. 入浴又は飲用上必要な情報(加水、加温、循環、入浴剤の使用・消毒の方法及びその理由)

温泉の医治的効用は、その成分を異にすることから千差万別で、特殊な疾病については、一般に、その利用を禁止すべきものも少なくありません。また、効用のあるものであっても、利用の方法が適性を欠くときは、有害な結果を招く場合もあります。公衆衛生や安全を確保する観点から、必要な情報の掲示をすべきとされているものです。

 

入浴(飲用)の際には、掲示事項をご覧ください。

例:群馬県温泉協会作成入浴掲示表

貴重な有限資源である「温泉」を大切に使いましょう!